この記事でわかること
- 買った後にすることの全体像
- 管理会社に任せる範囲:貸す・マンション・空き家で違う
- 納税管理人:国税と固定資産税で別々に届け出る
台湾など海外に住んだまま熊本の家を持つと、「日本で書類や税金の通知を受け取る人」と「建物を見る人」を、自分の代わりに決めておくことが必要になります。この2人が決まれば、買ったあとの手続きは一つずつ進められます。
買うまでの流れと、買うときの税金は「外国人が日本で不動産を買うときの流れと、かかる税金」で読めます。
買った後にすることの全体像

海外に住む所有者に関係する主な手続きは、次のとおりです。
| やること | 相手 | いつ |
|---|---|---|
| 国税の納税管理人の届出 | 税務署 | 確定申告が必要になる場合に、速やかに |
| 固定資産税の納税管理人の申告 | 物件のある市町村(熊本市は固定資産税課) | 市町村内に住所などが無い場合 |
| 家賃の確定申告 | 税務署(納税管理人を通じて) | 翌年3月15日まで |
| 郵便・通知の受け取り先を決める | 管理会社・管理組合・市町村など | 買ってすぐ |
| 売ったときの確定申告 | 税務署 | 売った年の翌年3月15日まで |
「非居住者」かどうかは、所得税では国籍ではなく、日本に住所があるか、引き続き1年以上の居所があるかで決まります(国税庁 No.2875)。以下は、日本に住所も居所もない非居住者を前提に書きます。
管理会社に任せる範囲:貸す・マンション・空き家で違う

管理の頼み先は、家の使い方で三つに分かれます。
貸すとき(賃貸管理) 入居者の募集と賃貸借契約の仲介は、宅地建物取引業の免許を持つ会社が行います。入居後の建物の維持と家賃の管理は、賃貸住宅の管理会社に任せるのが一般的です。管理戸数200戸以上の管理会社は国土交通大臣への登録が義務で、登録した会社には、契約前に書面で重要事項を説明すること、家賃などを自社の財産と分けて管理すること、オーナーに少なくとも年1回報告することなどが義務づけられています(国土交通省)。どこまでを任せるか(修繕の判断、更新の手続き、税の書類の作成など)は契約で決まります。契約書の業務範囲の欄が、そのまま任せる範囲になります。
マンションを持つとき(建物管理) 共用部分は、管理組合と、組合が委託する管理会社が管理します。所有者は管理費・修繕積立金を払い、総会の通知を受け取ります。2026年4月1日に施行された改正区分所有法(第6条の2)で、国内に住所などが無い区分所有者は、国内に住所などがある人(法人も可)を「国内管理人」に選べるようになりました。国内管理人は、専有部分の保存・利用改良、集会(総会)の招集通知の受け取りと議決権の行使、管理費などの支払いを代わりに行えます。規約で選任を義務づけることもできます(法務省)。
住まないとき(空き家の見回り) 自分が住まず貸しもしない場合は、通風・通水、外回りの点検、草木の手入れなどを、空き家管理のサービスに頼む方法があります。熊本市は「空き家管理事業者紹介制度」として、登録事業者の名簿を公開しています(名簿は2026年10月16日更新)。市は特定の事業者のあっせんや契約の仲介はせず、料金や内容は所有者と事業者の間で決めるとしています(熊本市)。
納税管理人:国税と固定資産税で別々に届け出る

国税(所得税)の納税管理人 納税管理人は、確定申告書の提出や税金の納付などを、日本に住所などが無い納税者に代わって行う人です。個人でも法人でもかまいません。家賃や売却で確定申告が必要になる非居住者は、納税管理人を決め、「所得税・消費税の納税管理人の選任・解任届出書」を納税地の税務署に速やかに出す必要があります(国税庁リーフレット、No.1923)。日本に住所や居所が無く国内の不動産を貸している場合、納税地は原則としてその不動産の所在地です(No.2029)。
届出をしないでいると、税務署長が書面で届出を求めることができ、それでも届出がない場合は、国内の一定の人(親族や、取引に密接な関係のある不動産管理会社など)を「特定納税管理人」に指定できる制度があります(2022年1月施行、国税庁)。
固定資産税の納税管理人 固定資産税は、毎年1月1日時点の所有者に市町村からかかります。地方税法では、その市町村内に住所などが無い納税義務者は、納税管理人を定めて市町村長に申告する(市町村の条例で定める地域の外の人を選ぶ場合は、申請して承認を受ける)ことになっています。ただし、徴収に支障がないと市町村長の認定を受けた場合は不要です(地方税法第355条)。熊本市は「納税管理人申告(申請)書」の様式(変更・取消の様式も)を公開しています(熊本市)。
熊本市の固定資産税・都市計画税は年4回払いで、2026年度の納期限は6月1日、7月31日、9月30日、2027年1月4日です(熊本市)。納付の方法は、金融機関・コンビニのほか、納付書のQRコードを使ったスマホ決済、地方税お支払サイトでのクレジットカード納付、口座振替などがあります。海外からどの方法が使えるかは、納税管理人の届出のときに、市の固定資産税課で聞けます。
海外から持っている人がどう頼んでいるかは atlas TALK(テーマ「お金と手続き」)で聞けます。
貸したとき:家賃の源泉徴収と確定申告

日本の不動産を貸して得た家賃は、日本で課税されます(国税庁リーフレット)。
借主が源泉徴収する場合(20.42%) 非居住者に日本の不動産の賃料を払う人は、支払いのときに20.42%の所得税・復興特別所得税を源泉徴収して納めます。法人か個人か、事業者かどうかは問いません(国税庁 No.2880)。2027年分からは内訳が所得税・防衛特別所得税・復興特別所得税に変わりますが、源泉徴収の合計の税率(20.42%・10.21%)は変わりません。
例外:個人が自分の住まいとして借りる場合 土地や家屋を、自分や親族の住まいとして借りる個人が払う賃料は、源泉徴収の必要がありません(No.2880)。会社が社宅として借りる場合は、この例外に当たりません。
確定申告は必要 源泉徴収されていても、されていなくても、家賃(不動産所得)は原則として確定申告が必要です。源泉徴収された税は申告で精算します(国税庁リーフレット、No.1926)。申告期限は翌年3月15日で、納税管理人を通じて申告・納付します。不動産所得の計算方法は、日本に住む人と同じです(No.1926)。
管理会社が家賃を受け取って送金する場合に、誰がどの時点で源泉徴収するかは、契約の形で変わります。契約の前に、税理士か税務署に聞いておく点です。
日台租税取決め:日本と台湾の二重課税をどう調整するか

日本と台湾の間には、日本の公益財団法人交流協会と台湾の亜東関係協会(いずれも当時の名称。現在は日本台湾交流協会・台湾日本関係協会)が2015年11月26日に結んだ「日台民間租税取決め」があります。国の条約ではなく民間の取決めで、日本では国内法(外国居住者等所得相互免除法)を整えて、2017年1月1日から租税条約に相当する枠組みとして実施されています(国税庁)。
不動産に関係する主な点は次のとおりです(取決めの和文)。
- 家賃:一方の地域の居住者が他方の地域にある不動産から得る所得は、不動産のある地域で課税できる(第6条)。台湾に住む人が熊本の家を貸せば、日本で課税されます。
- 売却益:不動産の譲渡による収益も、不動産のある地域で課税できる(第13条)。
- 二重課税の調整:台湾の居住者が日本で納めた税は、台湾の法令に従い、台湾の税額から控除する。控除できるのは、その所得に対する台湾の税額までです(第22条)。
つまり、日本の税がなくなるのではなく、日本で納めたうえで、台湾側で調整する仕組みです。台湾側で申告が必要か、どれだけ控除できるかは台湾の税法によるので、台湾の会計師に聞くのが確実です。日本と台湾の両方で居住者に当たりうる人は、どちらの居住者として扱われるかも、そのときあわせて聞きます。
郵便・連絡先と、空き家にする場合の注意

郵便は海外へ転送されない 日本郵便は、国内郵便物の国外への転送を行っていません(日本郵便)。税金の通知、管理組合の書類、公共料金の連絡などを日本で受け取る人と住所を決め、それぞれの相手に届けておく必要があります。熊本市は、市外に住む納税義務者や納税管理人の住所が変わったときは、納税通知書を確実に届けるため住所変更の届出をするよう案内しています(熊本市)。
空き家にする場合 熊本市は、空き家の管理は所有者・管理者の責任で、放置した建物の倒壊や落下物で他人に被害を与えた場合は損害賠償の責任を問われることがあるとしています(熊本市)。2023年12月施行の改正空家法では、放置すれば危険な状態になるおそれがある「管理不全空家」も、市町村の指導・勧告の対象になりました。勧告を受けると、その敷地は固定資産税の住宅用地特例(200㎡以下の部分は課税標準が6分の1になるなど)から外れます(国土交通省)。勧告がなくても、人が住む見込みがないと判断されると住宅用地として扱われない場合があります。
2026年の地震(令和8年熊本地震)のあと 2026年7月28日の地震で建物や土地が被害を受けた場合、熊本市では固定資産税・都市計画税の減免を受けられることがあります。被災した人の申請期限は2027年3月31日まで延ばされ、郵送やオンラインでも申請できます(熊本市、2026年9月14日更新)。国税は、熊本県八代市・宇土市・宇城市・八代郡氷川町に納税地がある人の期限が延長されています。それ以外の地域の人も、災害で期限までに申告・納付できないときは、税務署に申請して延長を受けられる場合があります(国税庁)。窓口の運用は、地震のあとで動きやすい時期です。
売るとき:買主の源泉徴収10.21%と例外

買主が源泉徴収する(10.21%) 非居住者から日本の土地や建物を買う人は、代金を払うときに、原則として10.21%の所得税・復興特別所得税を源泉徴収して納めます。法人だけでなく個人も対象で、事業者かどうかは問いません(国税庁 No.2879)。2027年分からは内訳が所得税・防衛特別所得税・復興特別所得税に変わりますが、源泉徴収の合計の税率(20.42%・10.21%)は変わりません。
例外:個人が自分の住まいとして1億円以下で買う場合 個人が自分や親族の住まいにするために買い、代金が1億円以下の場合は、源泉徴収の必要がありません(No.2879)。この場合、売主は源泉徴収されずに代金を受け取りますが、売却益の申告は別に必要です。
確定申告で精算する 不動産の売却による所得は確定申告が必要で、源泉徴収された税は申告で精算します(国税庁リーフレット、No.1926)。税額は、所有期間や取得費・譲渡費用で変わります。売る前に、手取りの見込みを税理士に試算してもらうと、売る時期や価格の判断材料になります。
まとめ

| 論点 | 事実 | すること |
|---|---|---|
| 管理 | 賃貸管理・マンション管理・空き家の見回りで頼み先が違う。2026年4月から国内管理人の制度 | 使い方を決めてから、任せる範囲を書面で決める |
| 納税管理人 | 国税は税務署、固定資産税は市町村へ別々に届け出る | 買ってすぐ、両方の届出先を確認する |
| 家賃 | 借主が法人や、事業用に借りる個人なら20.42%を源泉徴収。個人が自分の住まいとして借りる場合は不要。いずれも確定申告 | 申告の担い手と期限(翌年3月15日)を決めておく |
| 日台取決め | 家賃・売却益は日本で課税でき、台湾側で控除する | 台湾側の扱いは台湾の専門家に確認 |
| 売却 | 買主が10.21%を源泉徴収(個人の住まい・1億円以下は不要)。確定申告で精算 | 売る前に税の試算をする |
手順さえ分かれば、海外からでも熊本の家は無理なく持ち続けられます。
※2026年10月19日時点の情報です。個別の税務の判断は、税理士などの専門家の領分です。
次にすること
- 海外から日本の家を持っている人の経験を atlas TALK で聞く(テーマ「お金と手続き」)
- 買うまでの流れと税金を「外国人が日本で不動産を買うときの流れと、かかる税金」で押さえる
- 熊本県内で公開されている売買物件の情報を atlas で見る(各物件の取扱会社が掲載している情報です)
出典
- 国税庁 No.1923 海外勤務と納税管理人の選任又は解任(令和8年4月1日現在法令等)
- 国税庁 No.1926 海外勤務中に不動産所得などがある場合(令和8年4月1日現在法令等)
- 国税庁 No.2029 確定申告書の提出先(納税地)(令和8年4月1日現在法令等)
- 国税庁 No.2875 居住者と非居住者の区分(令和8年4月1日現在法令等)
- 国税庁 No.2880 非居住者等に不動産の賃借料を支払ったとき(令和8年4月1日現在法令等)
- 国税庁 No.2879 非居住者等から土地等を購入したとき(令和8年4月1日現在法令等)
- 国税庁 リーフレット「非居住者又は外国法人が日本国内の不動産を賃貸・譲渡した場合には確定申告が必要となる場合があります」(令和8年4月1日現在の法令)
- 国税庁 特定納税管理人制度の概要(令和4年1月)
- 国税庁 日台民間租税取決めに定める相互協議手続について(取決めの概要・国内法の施行日)
- 公益財団法人日本台湾交流協会 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための公益財団法人交流協会と亜東関係協会との間の取決め(和文)
- 国税庁 令和8年熊本地震に関するお知らせ(申告・納付等の期限の延長)
- e-Gov法令検索 地方税法(第300条 市町村民税の納税管理人、第355条 固定資産税の納税管理人)
- 熊本市 固定資産税に関する届書等(納税管理人申告(申請)書)(2025年7月25日更新)
- 熊本市 こんなときは固定資産税課にお申し出ください(2026年6月8日更新)
- 熊本市 固定資産税・都市計画税の納期限(令和8年度、2026年6月1日更新)
- 熊本市 市税の納付場所・納付方法(2026年4月1日更新)
- 熊本市 令和8年熊本地震で被害に遭われた方へ(固定資産税の減免)(2026年9月14日更新)
- 熊本市 空き家・建物を所有している皆様へ、建物の適正管理をお願いします(2025年1月22日更新)
- 熊本市 熊本市空き家管理事業者紹介制度について(2026年10月16日更新)
- 国土交通省 固定資産税等の住宅用地特例に係る空き家対策上の措置
- 国土交通省 賃貸住宅管理業 管理業者の業務(賃貸住宅管理業法)
- 法務省民事局 区分所有法・被災区分所有法の改正について(令和8年4月)
- 日本郵便 海外へ引越しするが、転送できますか?
この記事を読んだあとに
数字の読み方に迷ったら、実際に買った人・貸している人の話も聞いてみる。
