この記事でわかること
- 制度は三層。見る順番は「県 → 市町村 → 国」
- 熊本県の補助金:まず「自社がどの区分か」を決める
- 市町村の制度:菊陽・合志・大津を並べてみる
熊本で工場や研究拠点を構えるときに使える支援は、県・市町村・国の三つの層に分かれています。県の補助金は業種ごとに投資額と雇用数の基準があり、市町村は用地取得や固定資産税の軽減を独自に上乗せしています。そして多くの制度に共通するのが、「着工や用地取得の前に手続きが要る」という点です。
制度は多く見えても、県、市町村、国の順に見ていけば整理できます。内容は2026年10月時点のものです。
制度は三層。見る順番は「県 → 市町村 → 国」

| 層 | 主な中身 | まず開く場所 |
|---|---|---|
| 熊本県 | 投資額・雇用数に応じた補助金、融資 | 企業立地ガイド熊本(県企業立地課) |
| 市町村 | 用地取得補助、固定資産税の軽減、雇用奨励 | 各市町村の企業誘致ページ・例規集 |
| 国 | 地域未来投資促進法の税制特例など | 県の承認窓口、国の制度ページ |
県が運営する「企業立地ガイド熊本」には、市町村の支援制度が82件まとめて載っています(2026年10月時点の表示件数)。県央・県南・県北のエリアで絞り込めるので、最初の一覧づくりに使えます。全国の補助金をまとめて探すなら、中小企業基盤整備機構の「J-Net21 支援情報ヘッドライン」も地域と分野で絞り込めます。
ただし、まとめサイトは要約です。最終的な要件は、県の交付要項と市町村の条例本文に書かれています。
熊本県の補助金:まず「自社がどの区分か」を決める

県の企業立地促進補助金は、県内に工場などを新設・増設し、県と(または県の立会いで市町村と)立地協定を結ぶ企業が対象です。県内に本社がある企業向けには、地場企業立地促進補助金という別の制度もあります。交付要項(2024年8月6日以降適用)では、業種ごとに次の基準が定められています。
| 区分 | 投資額(土地を除く) | 新規雇用 | 投資分の算定 | 限度額 |
|---|---|---|---|---|
| 重点5分野(半導体・モビリティ・新エネルギー・食品バイオ・IT) | 3億円以上(食品バイオは1億円以上) | 5人以上 | 3〜5%(規模で変動) | 15億円 |
| 研究開発業 | 5,000万円以上 | 3人以上 | 5〜10% | 15億円 |
| 物流施設関連 | 1億円以上 | 5人以上 | 3%+賃借料の一部 | 1億円 |
| 一般製造業 | 3億円以上 | 5人以上 | 2% | 5億円 |
| 外資系企業(外資比率50%超) | 基準なし | 基準なし | 5% | 1.5億円 |
このほか、投資200億円以上・雇用200人以上の新設を対象とする「大規模投資企業」の区分(限度額50億円)もあります。
これに加えて、県内に住む新規雇用者1人あたりの助成(49人までは1人50万円、50人以上は人数に応じて増額。非正規は半額、派遣社員は対象外)が上乗せされます。限度額は投資分と雇用分の合計です。
海外の企業が見落としやすいのが、外資系企業の区分です。外資比率が50%を超え、半導体・モビリティ・新エネルギー・食品バイオ・IT・研究開発業・一般製造業のいずれかに当たる企業は、投資額・雇用数の下限が設けられていません。ただし、立地協定の締結が前提である点は他の区分と同じです。台湾企業が日本法人をつくって進出する場合、資本構成によってこの区分に当たるかどうかが変わります。進出の計画を固める前に、県の窓口へ当たるかどうかを聞くのが近道です。
県の補助金で対象になるのは、立地協定を結んだ日から操業開始日までに取得した固定資産です。協定の前に買った設備は対象になりません。適用事業所の指定は、操業開始日の30日前までに申請します(交付要項 第4条・第6条)。
なお、県内に本社がある企業には「地場企業立地促進補助金」という別の制度があり、建設工事に着手する30日前までに認定申請が必要です。
市町村の制度:菊陽・合志・大津を並べてみる

県の補助金に、市町村の制度が重なります。tsmc・jasm の進出で注目が集まる菊陽町と、隣接する合志市・大津町の条例を並べると、仕組みは似ていても基準が少しずつ違います。
| 菊陽町 | 合志市 | 大津町 | |
|---|---|---|---|
| 用地取得補助 | 取得価格の25%以内(上限2億円)。用地3,000㎡以上(研究所は2,000㎡以上)が要件 | 取得価格の20%以内(上限2億円) | 取得価格の20%(上限2億円。取得後3年以内の着工) |
| 主な要件 | 投資2億円以上・雇用5人以上(研究所は3人以上)・立地協定 | 補助:用地4,000㎡以上・投資3億円以上・立地協定・誘致条例の指定・用地利用計画の事前認定。税の軽減:投資5,000万円超・雇用5人以上(研究施設は3人以上)・着工30日前までに指定申請 | 投資2億円以上・雇用10人以上(研究開発・情報処理は5人以上)・用地3,000㎡以上 |
| 固定資産税 | 施設整備補助(税額の25%以内・3年度・年1億円まで) | 施設整備補助(税額の25%・3か年度・年5,000万円まで)。別に、固定資産税の軽減相当(税率1.05%で計算。3年間。仕組みは市に確認) | 施設整備補助(税額の25%・3年度・年5,000万円まで)。別に、不均一課税で税率1.4%→1.05%(3年度。投資3,000万円以上・着工30日前までに指定申請) |
| 雇用奨励 | 1人30万円(上限3,000万円) | 1人30万円(上限300万円。市内に住んで1年以上の人) | 正社員30万円・非正規15万円(上限300万円) |
※合志市は誘致条例(税の軽減)と立地促進条例(用地・施設・雇用の補助)の2本立てです。表の数字は条例の定めで、今年度に使えるか・予算があるかは、計画の早い段階で合志市 商工振興課(096-248-1115)に聞くのが近道です。
注意したいのは、雇用奨励の対象が「町内・市内に住む人」に限られることが多い点です。菊陽町は町内に住んで1年以上たつ、期間の定めのない雇用者、合志市は市内に住んで1年以上の人、大津町は町内に住所を有する常時雇用者が対象です。社員がどこに住むかで、受け取れる額が変わります。
候補の市町村が決まっていない段階なら、45市町村の誘致方針と工業用地を atlas plant の地図 で一枚の地図に並べて見られます。
国の制度と、着工前に必要な届出

地域未来投資促進法では、県が承認した「地域経済牽引事業計画」に沿った投資に、法人税の特別償却や地方税の軽減が用意されています。熊本県の基本計画は「第2期熊本県地域未来投資促進基本計画」(2024年4月〜2028年度末)で、事業計画の承認窓口は県の産業支援課、税の特例の確認は九州経済産業局です。計画の承認と、補助金や税の手続きは別に進みます。熊本市では、県の承認(令和5年4月1日以後のもの)と国の確認を受けた事業について、固定資産税・都市計画税を3年度分免除する制度があります。対象事業で生まれる付加価値額が3億円以上、かつ、事業を行う企業の直近2事業年度の平均付加価値額が50億円以上であること、対象資産の取得価額が1億円超(農林漁業は5,000万円超)、令和10年3月31日までに設置することなどが要件です。
もう一つ忘れやすいのが工場立地法の届出です。製造業などで敷地面積9,000㎡以上、または建築面積3,000㎡以上の工場は「特定工場」となり、原則として着工の90日前までに市町村へ届け出ます。菊陽町では2017年4月から窓口が県から町に移っています。
探す順番と、見落としやすい3つの点

探す順番は次のとおりです。
- 自社の区分を決める:業種、投資額(土地を除く)、新規雇用数、外資比率
- 県の交付要項を読む:該当区分の基準と限度額
- 候補市町村の条例を開く:用地面積、雇用者の居住要件、立地協定の要否
- 国の制度を見る:地域未来投資促進法の計画承認、工場立地法の届出
- 窓口へ事前相談する:用地取得・着工・雇用の前に
見落としやすいのは次の3点です。
- 順番を間違えると対象外になる:県の補助金は立地協定より前に取得した設備を対象にしません。合志市・大津町の税の軽減も着工30日前までの指定申請が要ります
- 立地協定が前提の制度が多い:県の補助金も菊陽町の補助金も、協定の締結が要件です
- 補助金は「予算の範囲内」:要件を満たしても、年度の予算や審査で額が変わることがあります
| 論点 | 事実 | 進出を考える企業への示唆 |
|---|---|---|
| 県の補助金 | 区分ごとに投資額・雇用数の基準(一般製造業は3億円・5人以上) | まず自社の区分を決める |
| 外資系企業 | 外資比率50%超は投資・雇用の下限なし(限度1.5億円) | 台湾企業の日本法人は該当を確認 |
| 市町村 | 用地取得20〜25%補助、固定資産税の軽減など | 雇用者の居住要件まで読む |
| 手続きの順番 | 着工前の認定・届出が要る制度が多い | 用地取得の前に窓口へ |
要件や額は年度ごとに改正されるので、申請の前に県・市町村の担当窓口で最新の内容を聞いておくと確実です。税の個別の判断は、税理士などの専門家の領分です。順番さえ守れば、熊本の支援は心強い味方になります。
候補地を比べるなら、atlas plant の地図 で45市町村の誘致方針と公開中の工業用地を見られます。用地のお問い合わせは、県・市町村の掲載ページにある窓口へ。運営の株式会社iSELLは宅地建物取引業者ではないため、土地の売買の仲介や条件の交渉は行いません。
※2026年10月時点の情報です。
出典
- 企業立地ガイド熊本「熊本県企業立地促進補助金」(2024-05-31更新)
- 熊本県「地域未来投資促進法」(産業支援課)
- 大津町 不均一課税の概要
- 熊本県企業立地促進補助金交付要項(R6.8.6〜)(熊本県)
- 熊本県地場企業立地促進補助金(熊本県 産業支援課、2024-04-01更新)
- 熊本県地場企業立地促進補助金 算定方式(熊本県)
- 要綱等(産業支援課所管分)(熊本県、2024-05-01更新)
- 企業立地ガイド熊本「支援制度情報」(熊本県企業立地課)
- 企業立地ガイド熊本「用地情報」(熊本県企業立地課)
- 企業立地ガイド熊本 熊本市企業立地促進条例による補助制度(製造・物流関連産業)
- 企業立地ガイド熊本 合志市工場等誘致条例
- 菊陽町工場等立地促進に関する条例(菊陽町例規集、令和4年9月14日最終改正)
- 企業誘致政策・支援(大津町 企業振興課、2023-12-05更新)
- 工場立地法の窓口が熊本県から菊陽町に変わりました!(菊陽町)
- 地域未来投資促進法に基づく固定資産税等の課税免除(熊本市、2025-10-07更新)
- 支援情報ヘッドライン(J-Net21/中小企業基盤整備機構)
- 工場立地法(e-Gov法令検索)
- 地域経済牽引事業の促進による地域の成長発展の基盤強化に関する法律(e-Gov法令検索)
- 地方税法(e-Gov法令検索)
この記事を読んだあとに
制度は読むだけでは分かりにくい。実際に進めた人の経験も確かめたい。
